◆船に取り残された新婚夫婦◆


ドイツのライン川。
そこでは「ライン川クルーズ」は名物。
私も数え切れないくらいライン川クルーズにはお仕事で出かけています。

この時はツアー初日。
お客様と空港でお会いして、翌日だったのです。

ツアコンがこのライン川クルーズでちょっと気を付ければいけないのが、
下船場所がツアーによりまちまちなので、お客様が間違って下船してしまわないことです。
船はジグザグに対岸から対岸へと止まりながら運行しているのです。
大きな 川ですから間違って対岸で下船してしまうと、バスではそこまで相当の遠回りをしないと行けなくなるのです。
どのツアコンも乗船前には心得ているので何度もお客様にはご説明しているはすです。
私もいつものように、
地図を広げ、対岸で他のグループと間違って降りないように何度も説明していました。
当時は下船場所に近づくと各グループのツアコンが船のマイクを借りて、
ツアー名、添乗員名などを告げ間違わないように心がけていたのです。
(最近では船に乗り込んでいる日本人がアナウンスをしてくれます)

日本人グループは大きく分けて二つの船着場で下船します。
そのふたつの船着場は川の対岸になっています。

クルージング中はそれぞれ自由に過ごしていただくので、
その間、私は船内のカフェでコーヒーを飲んでいました。
その時、一組の新婚夫婦が人懐っこくやってきました。
若い新婚夫婦はとても仲良くて感じの良いおふたりでした。
ご夫婦はツアコンの仕事に興味をもたれ、
私に色んなことを質問されました。
「ツアー中、迷子になる人とかいるんですか???」
と最初の質問でした。
「たまにいらっしゃいますよ」
と答え、結局その後船内でほとんどの時間をこのご夫婦と3人で楽しく過ごすことになりました。

そうしているうちに、もうすぐ日本人グループが降りる場所が迫っていました。
私は、
「船内アナウンスに行ってきますね。降りる場所間違えないようにネ。大丈夫よね」
と念を押して、その新婚夫婦も
「ばっちりです!そろそろ降りるところでスタンバッてますよ」
と言ってくれました。

ツアーの初日はツアコンは大人数の時は名前がイマイチ覚えきれてないことが多いのですが、この新婚夫婦だけはすぐに仲良しになったので名前を忘れるはずがありません。

アナウンス後念の為に手前の下船場所で私のお客様が降りないか、
私は船の降り口で目を凝らしていました。そこにはさっきの新婚夫婦も私の横あたりにちゃんとくっついていてくれました。
そして、私達の下船場所でお客様を誘導し念の為にもう他の日本人は残っていないかダブルチェックです。
この船着場で日本人グループはすべて降りるはずですから、船の中に日本人が残っていなかったらOKと言うわけです。
船に乗り込んでいる日本人スタッフもいつものことで
「大丈夫。誰もいません」
とチェックを助けてくれます。

船を下りてすぐそばにそれぞれのバスが待機しています。
小さな売店があるので、そこでお買い物を済ませたら、
バスはそれぞれのツアコンが人数を確認した後、次々に出て行きます。
私もバスの中の人数確認をしながらお客様が揃うのをお待ちしていました。
忘れもしません、30名様のツアーでしたが、
何回人数をチェックしても28名。
他のツアーのバスもいよいよいなくなり、売店にも人影がなくなりました。
おかしい!!誰がいないか名前でチェックしなければ・・・
と思った瞬間、すぐに気がつきました。

さきほど船でずっと一緒だった○木さん夫婦がいないのです。
降りる寸前までそばにいたのに・・・・・
唯一、私と一緒に長い時間船で過ごし、念を押していたのに・・・

船会社にすぐに電話を入れ船と連絡を取ってもらうことにしました。
手前の船着場で降りてないところまでは私もはっきりと確認しているのですから。
あるいは他のバスに乗っていってしまったのか・・・

船会社からすぐに
「日本人2名確保」の連絡がありました。
やっぱり○木さん夫婦でした。
船会社にお願いし、次の一番近い対岸でない船着場で降ろして頂くことにしたのです。
私達一向は、次の行き先とは逆の方向へ30分バスを走らせ、
無事、涙ぐんだ○木さんご夫婦と出会うことができました。

事情を聞いてみると、確かに降りる船着場で降りようとしたそうですが、
たまたま横にいた外国人旅行者と話し込んでしまったそうです。
海外旅行が初めてだったおふたりにとっては、
片言の英語でも話が出来たことが嬉しくてつい夢中で話し込んでしまい、
降り口の近くの奥ばったところにいってしまったそうです。
気付いてみれば外国人以外日本人がいなっくなってしまい、途方にくれていたとのこと。

他のお客様は良い方ばかりで、
拍手で○木さんご夫婦を迎えてくださいました。
ツアー日程はずれ込んでしまったものの、
和気藹々とした雰囲気で、
「こんなこともあるんですね!」
とツアーの和は広がり、皆さん仲良く最後まで過ごしていただきました。

○木さん夫妻、他のお客様も今ごろは懐かしいハプニングとして今でも思い出していることでしょう。

<<戻る