◆シベリア大陸横断編(3)◆


オリエント急行と一言に言っても色んな種類のオリエント急行が存在します。私たちは憧れのアガサクリスティーの「オリエント急行殺人事件」と同じ列車にも乗りました。
その中はノストラジックでまるで映画の中のワンシーンのような車内に感動を覚えました。
列車スタッフは皆洗礼された教育を受けていて、私のことは「マダム」と呼んでくれるのです。10カ国も列車で国境を越えるのは私には初めての体験でしたが、レストランカーでの豪華な食事、バーでのひと時はお仕事とは言え、酔いしれる何かがありました。

列車は乗客用コンパートメント、レストランカー、バーやスタッフカーなどが 連結しているので30両近くあったでしょうか。
私達スタッフのコンパートメントもあちこちに別れており、いつも同じ場所にいるとは限らないので車内での連絡は常にトランシーバーを使用していました。

ポーランドからベラルーシへ入国する時のことです。
列車はあちらこちら駅に一時停車したりしながら進んでおり、予定時刻とはかなり一致しなかった事もありベラルーシ入国の際にすぐに気付かなかったのです。

私は列車中央付近にいたのですが、列車前方にいたスタッフから
「銃を持った入国係員が乗り込んできた。団体ヴィザの提示を要求されている」
と、なにやら緊迫した声がトランシーバーから飛び込んできました。

普通の国の入国ではそんなに緊迫することも無かったのですが、
ベラルーシと言うお国柄、入国審査はそれはそれは厳しいのです。
団体ヴィザのほかに様々な入国用書類も必要になってきます。

不運なことに銃を突きつけられたスタッフは団体ヴィザも書類も手元には持っていませんでした。書類は別のスタッフが持っており、ヴィザは私が持っていたのです。
そのヴィザと書類を取りに行こうとしたスタッフは銃を突きつけられ、椅子に座らせられて身動きが取らない状況。緊迫した声にもなるはずです。

私はとりあえずヴィザを持って前方へ移動しようとしたのですが・・・・
遂に私のところにも入国係員がやってきたのです。
英語があまりわかりそうもない銃を持った係員。
「動くな」とばかりに銃を突きつけます。
どうやら、列車のあちらこちらでそういう状況だったらしいのです。

私はバックの中から団体ヴィザを係員に見せました。
係員は状況を判ってくれて、今までの怖い顔から一転にっこりと笑ってくれました。
そして私とその係員とで列車中を回り、ヴィザに記されている名前と本人が一致するかパスポートチェックに回ってくれたのです。

その間、係員は私には笑顔でおまけに頭までなでてくれる・・・??
どうやら私のことを子供だと思ったようです。
他の人には銃を向けたまま、私には子供扱いで笑顔。
変な対応でしたが、長い入国審査は終わりました。

旧ソビエト連邦の国では毎回このような厳しい入国審査が行われたのですが、その度に私だけはいつも頭をなでてもらいました。
スタッフ全員から
「おかし〜よ〜」とブーイングでしたが・・・・

あちらの方は日本人の年が想像しにくいのでしょうか。笑


つづく

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